絶対にネタバレできない作品に、また出会うことができた。それが『手紙は憶えている』である。
かつてアウシュヴィッツ収容所で捕虜だった老人が、友人の書いてくれた手紙だけを頼りに、家族を殺された復讐をする物語。手紙に書かれた人物を一人一人訪ねて、本当に復讐すべき相手なのかを確かめていく。旅の途中で何度も忘れるが、その度に手紙が思い出させてくれる。
老人が復讐などできるのだろうか。絶対に無理だと思わせるほどにヨボヨボの老人・ゼヴを演じるのは名優クリストファー・プラマー。しかも認知症。まったく可能性を感じない。手は震えるし、足元もおぼつかない。しかしながら、なんとかどうにか進んでいくから目が離せない。
そんなヨボヨボなゼヴを応援せずにはいられないし、絶対に復讐を果たしてほしいと願うはず。アウシュヴィッツ収容所で起きたことは歴史の授業で触りしか聞いたことがないし、調べるのも怖いし、どこからどこまでが真実なのかも不明瞭かもしれない。
しかし本作を見るにあたり、老人が命がけで復讐するに値することが起きていたのだとわかる。
物語が進むに連れ、勘のいい人はサスペンスのからくりに気がつくかもしれない。私も何度も「あ、おそらくこれは…」と思った。
でも、ぜんぜん違った。完全に騙される。そして謎に気がついた時、物語は終わる。
見事にやられた。老人、おそるべしである。ちなみに本作、ホラー描写はないけれど、血が苦手な人は少しだけ注意。
全力でネタバレせずにおすすめしたので、できれば予告編は見ずに鑑賞してほしい。
Amazonプライム、Netflixで見ることができるので、加入している人は今すぐ見るべき。
それではまた。映画カタリストのゆうせいでした。