ども、ゆうせいです。年月を重ねることで深みが出る。これは人間でもウイスキーでも同じです。しかし、そこに古さが出てしまうとマイナスに働くことになるかもしれません。
深みにこだわるばかりに、新しい技術やニーズに対しておろそかになってしまうのです。
そこで今回は、三重県大台町で60年以上も大工として働き、現在は木工職人として活躍している、ウッドクラフト廣田の廣田利夫さんからお聞きしたドキッとする話をお届けします。
「年寄りが作ったものだと言われたら終わり」
現在78歳となられた廣田さんですが、
「年寄りが作ったものだと言われたら終わり」
と語ってくださいました。
大工として60年以上の経験があるけれど、だからと言って古いものを作っていい理由にはならないと。
若い人が作ったと思わせるように、思えるように。若いピチピチな人が作ったように仕上げなくてはならない。これが一番大事なことだそうです。
お聞きした瞬間にドキッとしました。だって60年以上も第一線でご活躍されてきた方がその経験を盾にすることなく、若い人だと思われたいだなんて。
しかも、これって廣田さんだけに言えることではありませんよね。
ブログなどの文章にしても、写真にしても、そしてデザインにおいても同じことが言えます。
もちろん経験を積むことは大事です。でも、プラスになることもあれば、マイナスになることもあることを理解していないと、どんどん古臭いものになりがちです。
ブロガーでもライターでも、文章のスタイルや構成、写真の撮り方や配置など、経験に頼ってばかりでは表現がワンパターンになりますから。
大工が作った家具と言われて面白いわけがない
また、大工を長年されてきた廣田さんですが、家を作ることと家具を作ることには大きな違いがあると語ります。
木を扱うことは同じでも、家を作る感覚でいるとまずいことになるそうです。
なぜなら家は人が入って生活するものですが、家そのものに関心をもっているわけではないから。家という自然な道具。柱の一本一本に対して強い愛着をもつわけではなく、家全体にもつものだから。
しかし、家具は違う。その一つ一つに対して関心をもつ。椅子にしてもテーブルにしても、それぞれに愛着を持つわけです。
これを理解していないと、家を作る感覚で家具をつくってしまう。すると、家具としての機能は十分でも、すごく無骨なものが出来上がってしまう。
結果、「やっぱり大工さんが作った家具だなぁ」と思われてしまう。
そんなこと言われて、面白いわけないですよね。
むしろ「えっ!?この素敵な椅子を大工さんが作ったの?」と思わせなくてはいけない。
岐阜や愛知の木工は有名ですが、それと比較しても負けないものを作らなくてはと、日々意識しているそうです。
廣田さんの作品をご紹介
さて、そんな廣田さんの作品を少しご紹介したいと思います。
まずはこちらのベンチ。
実際に座ってみたところ、これまでにない座りやすさ!
その秘密は、中央の凹み。座った時に、スッとお尻がおさまるようになっています。
こちらは何だと思いますか?
実は、お風呂で使う椅子です。
高野槇を使用しており、水に強く、高級温泉旅館においてある椅子と同じ香りがします。
さらに、子供も大人も楽しめる積み木や、
打ち出の小槌もあります。
作品のどれも丸みがあって、質感がよく、ずっと触っていたくなる優しさがありました。
さいごに
大工として60年以上の経験がありながら、それを盾にすることなく切替えて考えられる柔軟性に頭が下がります。私なんてたった数年の経験でも鼻息あらく自慢してしまいそうですが、廣田さんのお話を聞いて恥ずかしくなりました。
やっぱり、人間いくつになっても、どんな経験を得ても増長してはいけないなと深く心に刻み込ませていただきました。
また、今後についてお聞きしたところ、
「倉庫には大台杉をはじめ、まだまだ多くの素晴らしい木材が加工を待っている。分けてほしいと頼まれることも少なくないが、全部自分で使いたいので日々製作に励みます。」
と、笑顔でお答えいただきました。
廣田さん、ありがとうございました!
【ウッドクラフト廣田】
電話番号:0598-76-0767
住所:三重県多気郡大台町天ケ瀬209番地
サイト:ウッドクラフト廣田 | 松阪牛だけじゃないよドットコム